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起業時の法人銀行口座開設のハードルと事前準備

2020-10-02

年々高くなる法人銀行口座開設のハードル

警察庁の発表では、令和元年の特殊詐欺の認知件数は16,851件(-993件、-5.6%)、被害額は315.8億円(-67.0億円、-17.5%)で、前年に引き続き認知件数、被害額ともに減少しているが、依然として高い水準の被害が発生していることから、深刻な情勢です。こうした特殊詐欺に実体のない法人銀行口座が使われることが多いことから、銀行での法人口座開設のハードル(=準備すべき書類、事業実態の実在性など)は年々高くなっています。

起業時に法人口座開設で躓かないために

口座開設ができなければ、顧客や取引先から「銀行から認められていない存在」との烙印が押され、事業は立ち行きません。

法人の設立(=会社を作ること)も暴力団対策法等で株式会社の定款認証が厳しくなってきていますが、さらに会社と事業の実在性を示さなければならないのが口座開設時です。銀行により審査基準は違いますが、次のような準備をしておくことで法人口座開設を乗り切ることができます。

(1)資本金はある程度必要

資本金は1円から会社設立ができますが少な過ぎると事業実態がないとみなされます。事業遂行可能な金額が必要です。

(2)事業実態のある場所が必要

繁華街の住所表示目的でバーチャルオフィスを本店にすると、実在性なしとされる可能性が高くなります。銀行から訪問調査されても対応できる場所が求められます。

(3)事業実態説明の事業計画書を準備

事業実態の実在性を示すために、締結済みの顧客との売買契約書(=複数が望ましい)などを示すことができればベターです。まだそうした証拠を示すことができない場合には、少なくとも、銀行に実現可能性を納得してもらえるだけの事業計画書を準備しておきましょう。

(注)他に登記簿謄本原本等が各種必要。

法人の所有者が外国法人の場合

法人の株主が非居住者(=外国法人・国外在住者)の場合には、提出書類が増えます。親会社の上にさらに親会社がある場合などには、実質的支配者の本人確認資料(=パスポートの写し、公的機関発行の会社登記・居住者証明書など)も必要となります。

なお、2016年10月に政府が対日直接投資推進目的に金融庁経由で3メガバンクに態勢整備を要請し窓口はできていますが、審査体制(必要書類)に優遇はありません。

グッドキャリア企業アワード2020

2020-10-02

従業員の自律的なキャリア形成支援を
 厚生労働省は、「グッドキャリア企業アワード2020」への応募受付を開始しました(応募受付期間は2020/9/1~10/9)。
 この賞は、従業員のキャリア支援の取組を推進している企業等を表彰し、その理念や取組内容、具体的な効果等を社会に広め、定着を期すことを目的としたものです。
 具体的な「グッドキャリア」の在り方は各企業の経営理念などに応じて多様に設定されうるものですが、その実現に向けて、従業員がキャリアビジョンについて考える機会の設定や、人事・教育訓練制度の充実などを積極的に推進している企業を「グッドキャリア企業」としています。(公式サイト「2019アワード概要」より)
「キャリア支援」の内容については、次の3つの観点から評価されます。
①「キャリア支援の特徴、理念」
 自社におけるキャリア支援の特徴の理解度、人事管理上の課題や人材育成ビジョン・企業ビジョンとの有機的な関連性
②「キャリア支援の取組」
 キャリア形成について考える機会、キャリア形成に資する職業能力開発・自己啓発の機会や職業能力評価の仕組みの有無、それらが定着しているか 等
③「キャリア支援による効果等」
 具体的な効果、経営・人事管理上の課題の解決につながっているか 等
 これらの観点から、「大賞」と「イノベーション賞」が決定されます。

受賞企業の取組事例
 応募を受け付けている公式サイト「グッドキャリアプロジェクト」(https://career-award.mhlw.go.jp/)では、過去の受賞企業の取組が紹介されています。
たとえば、従業員45人の建設業の企業では、外部教育機関や取引先との連携による能力開発を実施し、経営幹部と従業員がキャリア目標を考えるための面談を行うなどの取組を進め、生産性や技能の向上による顧客満足度の向上、自主性をもつ従業員の増加などの効果が報告されています。
いまはまだ準備が整っていなくても、今後の取組のために、一度サイトをご覧になってみてはいかがでしょうか。

高齢者の職場環境改善に補助金活用を

2020-09-25

新型コロナウィルス感染防止にも

エイジフレンドリー補助金は、高齢者が安心して安全に働くことができるよう、職場環境改善等の安全衛生対策に補助を行うため創設されました。対象となるのは、高年齢労働者(60歳以上)を常時1名以上雇用している中小企業で、労働保険及び社会保険に加入していることなどの要件があります。

費用補助の対象となる対策は、

①身体機能の低下を補う設備・装置の導入

②働く高齢者の健康や体力の状況の把握等

③安全衛生教育

④その他、働く高齢者のための職場環境の改善対策

などがあげられます。

また、社会福祉施設、医療保険業、旅館業や飲食店等の接客サービス業等、利用者と密に接する可能性が高い業種においては、新型コロナウィルス感染防止のための設備作業の改善が大切です。利用者や同僚との接触を減らす対策や対人業務を簡素化できる設備・作業改善も、補助金の対象として想定されています。

具体的には、介護におけるリフト、スライディングシートの導入により、抱え上げ作業を抑制することや、客室への荷物配送・配膳等の自動搬送機器の導入などがあげられます。

補助金額は、高年齢労働者のための職場環境改善に要した経費の2分の1で、上限額は100万円(税込み)となります。

 

補助金申請の手続き

補助金申請期間は、令和2年6月12日~10月末日、必要書類等はHPに掲載されています。申請先は、(一社)日本労働安全衛生コンサルタント会で、平日9:30~12:00、13:00~16:30に電話での問い合わせ対応も行っています。

(詳細は→https://www.jashcon-age.or.jp/

申請の翌月に審査が行われ、交付決定が行われた案件については交付決定通知が送付されますが、交付決定日以前に支払った費用は補助対象となりません。また、安全衛生対策のための機器等をローンで購入した場合やリースの場合は、補助の対象外となりますので、ご注意ください。

健康診断と健康情報の取り扱い

2020-09-25

健康診断は使用者の務め

使用者は従業員の健康を確保するため、労働安全衛生法で常時使用労働者の1年以内ごとに1回の健康診断受診義務が定められています。

従業員の健康情報を知り、安全配慮義務を行い健康管理、情報管理することは使用者の務めです。企業と労働者は労働契約を結んでいるので労働できる健康を有しているかを把握しておかなくてはならず、労務提供に関連した健康状態を取得しなくてはなりません。受診の結果の取り扱いは使用者に帰属するとされています。

適切な情報管理

使用者は健康診断の履行を通じて労働者の心身の状態に関する情報を取得・利用・保管することとなります。使用者には労働者の健康確保が求められるものの、当該情報は「要配慮個人情報」にあたります。労働者の個人情報を保護する観点から、現行制度においては使用者が心身の状態の情報を取り扱えるのは労働安全衛生法令及びその他の法令に基づく場合や本人が同意している場合の他、労働者の生命、身体の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき等です。秘密保持は重要ですがプライバシー問題とは別であり、使用者は個人情報を得るので情報管理をすることが求められ、情報は慎重な取り扱いが求められます。記録は5年間の保存義務があります。

就業規則には健康診断の受診義務が載っていると思いますが、結果が本人にしか届かない場合は受診結果を会社に報告する旨を規定しておくのがよいでしょう。

健診と費用、賃金

健康診断は使用者の義務なので、健康診断に掛かる費用は使用者が負担しなければなりませんが、しかし、健康診断を受診している間の時間に賃金が発生するかは、健康診断の種類によって異なります。

健診で労使双方が健康状態を把握しましょう

まず、雇用時の健康診断や、定期健康診断は業務に関連して行われるものではないため、支払ってもよいけれど、支払い義務はありません。特定業務に従事する者は業務に関連して行うものであるため、賃金を支払う必要があります。

1か月単位の変形労働時間制の 時間外労働算定

2020-09-25

労働時間における変形労働時間制は、厚労省の調査によると平成31年では過半数以上の企業が採用しています。しかし正しい運用が難しいだけでなく、特に時間外労働の計算方法が複雑でそのため誤った運用になっている例もあります。

1か月単位の変形労働時間制時間外の扱い

1か月単位の変形労働時間制は労使協定又は就業規則に規定して運用ができます。労使協定を労基署に届け出る必要はありません。1か月以内の一定の期間を平均し1週間当たりの所定労働時間が40時間(10名未満の商業・サービス業は44時間)を超えない定めをしたときは、特定された週や日において法定労働時間を超えて労働させることができる制度です。

一般的な労働時間は1週40時間、1日8時間を超える実労働時間が時間外労働となりますが、変形労働時間制ではそれを超えてもあらかじめ特定された所定労働時間内であれば時間外労働にはならず残業代は発生しません。この場合は所定労働時間が法定労働時間を超えて設定されている週又は日は法定労働時間を超えた部分が時間外労働となります。

これは週単位、日単位の労働時間の把握が必要です。1か月間の対象期間の法定労働時間の総枠(40時間×月の暦日数÷7で計算)だけでは判断できません。つまり時間外労働の計算は①日々について→②週について→③変形期間の順にその合計時間数が時間外労働の時間数となります。

簡易な判断方法

各月の日、週、変形期間の順に時間外労働をチェックするのはなかなか大変です。もう少し簡単に判断する方法はないでしょうか。一つの方法として所定労働時間超の労働時間をすべて時間外労働とみなすことで1回のチェックで済みます。この場合、各月の暦日数に応じて月間所定労働時間の総枠を設定、月間所定労働時間の総枠を超える時間数をすべて割増の対象とする。月間所定労働時間はできるだけ法定労働時間に近づける(法内か法外かの判断の手間は省けるが割増無し部分1.0の賃金も割増有り1.25増で払うこととなるため差の時間数を減らしておく)。また、1日の所定労働時間はあまり何種類も作らず、働く人も毎日働く時間がある程度固定化されている方が働きやすいと言えるでしょう

厚生年金の標準報酬月額上限 ~62万円から65万円に~

2020-09-16

厚生年金の標準報酬月額上限の改定

令和2年9月から厚生年金の標準報酬月額の上限が、平成12年10月以来、20年ぶりに引き上げられます。なお、健康保険の標準報酬月額の上限に変更はありません。

 

<現 行>(令和2年8月まで)

等級 標準報酬月額 報酬月額
第31級 620,000円 605,000円以上

 

<改定後>(令和2年9月以降)

等級 標準報酬月額 報酬月額
第31級 620,000円 605,000円~

635,000円未満

第32級 650,000円 635,000円以上

 

厚生年金保険料のへ影響

報酬月額635,000円以上の被保険者に対する厚生年金保険料が増額となります。

厚生年金の保険料率は183/1,000ですので、第31級から第32級となる被保険者の保険料は一人当たり月額113,460円から118,950円へ5,490円増額となります。

厚生年金保険料は事業主と被保険者の折半負担のため、事業主と被保険者の負担額の増加は、各々月額2,745円となります。

したがって、事業主側も対象となる被保険者一人当たり年間33,000円弱の厚生年金保険料の負担増となります。

対象者が100人いる事業主の場合、社会保険料負担額が年間300万円以上増えることになりますので、影響は比較的大きなものとなりそうです。

 

改定による標準報酬月額変更の届出は不要

今回の標準報酬月額の上限改定によって、既に報酬月額が635,000円以上に達している被保険者については、令和2年9月下旬以降、日本年金機構から事業主に「標準報酬改定通知書」が送付されますので、事業主からの届出は不要です。

しかし、改定後の給与計算の際に、厚生年金保険料の控除額の変更が漏れないよう、注意しましょう。

心地良い職場環境の指針 ~快適なオフィス空間を目指して~

2020-09-08

事業主の職場環境配慮義務

コロナ禍の中で迎えた今年の夏も、例年通りの暑い日が続きました。猛暑の中通勤をし、空調の効いたオフィスに到着すると少しほっとできますね。

ところで、過ごしやすいと感じる環境は人それぞれですが、温度や湿度を含む職場の快適な空間作りのルールは、事業主の努力義務として法律で定められていることをご存じですか。今一度、規則を確認してみましょう。

安衛法および事務所衛生基準規則

労働安全衛生法(安衛法)第71条の3の規定に基づく快適職場指針によると、事業者は、以下の4つの視点から措置を講じ「仕事による疲労やストレスを感じることの少ない、働きやすい職場づくり」を目指すことが望ましいとされています。

(1)作業環境の管理

(2)作業方法の改善

(3)労働者の心身の疲労の回復を図るための施設・設備の設置・整備

(4)その他の施設・設備の維持管理

これによると、不快と感じることがないよう、空気の汚れや臭気、温度等を適切に維持管理することや、心身の負担が大きい力仕事や不自然な姿勢での作業をさせないこと、休憩室等を設置・整備すること、洗面所やトイレ等も清潔で使いやすい状態にしておくこと等が示されています。

また、快適な職場空間を維持するため継続的かつ計画的に取り組み、労働者の意見を聞き、個人差への配慮及び潤いへの配慮も考慮すべきとしています。

更には、安衛法に基づく事務所衛生基準規則には室温が17℃以上28℃以下になるように努めること等、より具体的な数値が示されているので確認するとよいでしょう。

快適職場で効率アップ

勤労者にとって、職場は生活時間のおよそ3分の1を過ごす場所であり、いわば生活の場の一部といえます。その生活の場が暑すぎたり、寒すぎたり、汚れていたり、身体に負担がかかる作業であったり、人間関係が良くない場合には、本人にとって辛いだけでなく、生産性の面からも能率の低下をきたします。

空調や騒音など物理的な配慮だけでなく、人間関係の風通しの良さも大切ですよね。

職場を疲労やストレスを感じることの少ない快適なものとすることは、職場のモラル向上、労働災害の防止、健康障害の防止だけでなく事業活動の活性化に繋がることでしょう

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